SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

黒木がガクガクと震えながら、あたしの体を確かめる。


「 みくっ ! みくっ!」


泣きそうな顔で、あたしの体に手をあてる。


……ああ、

あたし、服が赤と白のまだら模様。

黒木はあたしの手首を両手で包んだ。


……あったかい……


黒木の手から、じんわりとした熱が伝わってくる。

あたしの冷えた体が徐々に温められていく……

黒木は手首の傷も、掻きむしった傷も、あっという間に治してしまった。


「……はあ~、」


黒木はあたしを抱きしめる。

そしてジャケットを脱ぐと、それをあたしにかぶせた。


「 一樹、あとは頼む 」


黒木はチラッと満月を見上げる。


「 ええ。とにかく早く車に 」
< 111 / 795 >

この作品をシェア

pagetop