SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
〈 “ ……美空、あなたって人は……” 〉
一樹がふう~っとため息をもらす。
そしてあたしの頭をグッと自分の胸に引き寄せた。
〈 “ 分かりました。 では、わたしも付き合いますよ。その悲しみに ” 〉
〈 “ 一樹?” 〉
トクン、トクンと一樹の心音が聞こえる。
〈 “ 美空、これだけは忘れないで下さい。 あなたはけして一人ではありませんよ。 わたしや、黒木さんや、D.S.Pのみんなもついているんですからね ” 〉
そう言って一樹はあたしの頭を優しくなでる。
〈 “ うん。ありがとう、一樹 ” 〉
あたしは素直に言葉を返した。
〈 “ それにしても、今日はよく頑張りましたね ” 〉
一樹の優しい声が心をほぐして、
あたしはゆっくりまぶたを閉じる……
〈 “ なんか疲れた。長い、一日だった……” 〉
静かな車内には、車のエンジン音だけが響いていた……