SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「……はあ、」
実情としては普段の美空の、あの不安定な能力でも万が一の為に確保しておきたい所だが……
……だが、な。
美空にとっては、酷な事かもしれねえな。
これは指揮官としてじゃなく、一人の人間としての俺の心情だ。
美空はBlue dollで八年もの監禁生活を強いられてきた。
その上、さらにD.S.Pに縛り付ける事は、美空の人間としての尊厳を奪っている事になるんじゃねえのか……
俺の中でくすぶっていた思いが芽を出す。
自由にさせてやりたい。
普通の社会生活を送らせてやりたい。
しるしだ、役目だ、うんぬん抜きにして
これが、俺の本心だ。
「 俺も人の親だしな 」
ふと蘇る胸の痛みに、ギリッと奥歯を噛み締める。
深くイスに座り、一樹の提示した案を思い出す。
「……ったく、しょーがねえな 」
先の執着を断ち切るように、一気にコーヒーを飲み干した。
はっきり言って、問題は山積みだ。
Blue dollの本部が消失したとはいえ、組織自体が壊滅したのかは疑問が残る。
どこにどうマフィアの繋がりがあるか分からない上、Blue dollだった美空の情報がもれていないとも限らない。
満月の夜の美空の異変も気になる。
挙げたらキリがないが……
俺も、俺なりに策を練る事にした。
窓の外を再び眺める。
さっきよりも大人数が、美空を取り囲んで笑っていた……