SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
学校へ行けと勧めたのは一ノ瀬だった。
勉強がどうのこうのよりも、学べる事があるはずだと……。
黒木は反対したけど、あたしは “ 行く” って自分で決めた。
小学二年の秋までしか学校に行った記憶がないけど、なんか毎日、笑えてたような気がするから……
——ジャリ、
ふと立ち止まり、今出て来たマンションを振り返る。
閑静な住宅街に立つクリーム色のマンション。四階建てで、上の方が少し斜めになっている。
ここが今のあたしの家。黒木とユリもここに住んでいる。
ここは黒木が所有するマンションで、なんでもあたしの為の特別仕様のマンションなんだそうだ。
外観は普通のマンションだけど、たしかに中はかなり変わった事になっている。
一階はすべて、飲食店、雑貨屋、Barなどのお店が入り、二階から上はまるで一つの家のような造りだ。
個人の部屋は両端の6部屋で、真ん中には共有のリビングダイニング、トレーニングジム、会議室、リラクゼーションルーム、瞑想部屋?
とにかく、生活に適した環境がすべて整えられているのだ。
こんなのポンと建てられるなんて、黒木は一体何者なんだ。