SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


本人いわく、D.S.Pに来る前はずいぶん荒れていた時期があるそうで、その時にしこたま金を稼いだとかなんとか。

なにをしてたかは知らないけど……

まあ、でも……、 黒木はいいやつだ。

あたしの為にいろいろ力を貸してくれている。

黒木がいなかったら、あたし……


「……ふぅ~、」


胸の中があったかくなるのを感じた。

あたしは再び歩き出す……

六月のジメッとした空気が、露出した肌にまとわりついた。


「……雨、降るのかな 」


歩きながら、あたしはぼーっと空を見上げる。


「 おい、どこ行くんだよ!」


うしろから誰かに腕をつかまれた。


……?

振り向くと、そこには背の高い、切れ長の目をした少年が立っていた。

あたしと同じ柄の制服。

ワイシャツは上のボタンが外され、赤いネクタイをゆるく結んでいる。

黒い髪は上の方を無造作に立たせていた。
< 127 / 795 >

この作品をシェア

pagetop