SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
本人いわく、D.S.Pに来る前はずいぶん荒れていた時期があるそうで、その時にしこたま金を稼いだとかなんとか。
なにをしてたかは知らないけど……
まあ、でも……、 黒木はいいやつだ。
あたしの為にいろいろ力を貸してくれている。
黒木がいなかったら、あたし……
「……ふぅ~、」
胸の中があったかくなるのを感じた。
あたしは再び歩き出す……
六月のジメッとした空気が、露出した肌にまとわりついた。
「……雨、降るのかな 」
歩きながら、あたしはぼーっと空を見上げる。
「 おい、どこ行くんだよ!」
うしろから誰かに腕をつかまれた。
……?
振り向くと、そこには背の高い、切れ長の目をした少年が立っていた。
あたしと同じ柄の制服。
ワイシャツは上のボタンが外され、赤いネクタイをゆるく結んでいる。
黒い髪は上の方を無造作に立たせていた。