SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「……ああ、そうか。一ノ瀬透。一ノ瀬透は一ノ瀬の……」
「 ああ、分かったらさっさと行くぞ 」
一ノ瀬透はまた歩き出す。
今度は速度を落とし、あたしの隣を歩いた。
爽やかなにおいが一ノ瀬透から香る……
「 今日は初日だから一緒に行ってやるけど、明日からは一人で来いよな。 いくら親父に頼まれたとはいえ、全部は面倒見切れねえし。 何でもかんでもオレに頼ろうとするなよ 」
一ノ瀬透が厳しい目を向けてくる。
……ああ、その目、一ノ瀬そっくりだ。
性格も、伝わってくるものが一ノ瀬と似てる気がする。
「 あ~。わかった、一ノ瀬透。 明日からは何があっても絶対に頼らない、一ノ瀬透 」
「…………」
一ノ瀬透が足を止める。
「 一ノ瀬透?」
「 それ長えし。透って呼べよ 」
「……とおる 」
透はポケットに手をつっこんであたしを見る。
「……絶対、オレに頼るなとは言ってない。どーしても困った時はオレに言え。 ……ただ、何でもかんでも手助けしてたらおまえの為になんねーだろ。 オレは甘やかす気はないし、自分の事は自分で出来るようにならなきゃ、意味がない 」
「……ふ~ん 」
「 ふ~んって、ちゃんと人の話聞いてんのかよ?」
「 聞いてる 」
あたしはじーっと透を見つめる。
「……なんだよ 」
「……似てる。一ノ瀬と。おんなじような事、言ってた 」
「……へぇ、」
透がふっと前を向く。
また、お互い歩き出した……