SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「 あのさ、」
しばらくして透が口を開く。
「 おまえ、全然喋れんじゃん。親父からあんま日本語、喋れねえって聞いてたけど?」
「……あ~、」
……うん。
年々、言葉も上達してきてる、と思う。
説明、以外は。
「 日本とドイツのハーフで、イギリスの血も混じってんだろ? すげーな、その銀髪といい、目の色といい、オレ初めて見たわ 」
「…………」
マニュアルでは、あたしはハーフって事になっている。
言葉の不安もあるし、日本人離れしたこの容姿もあって、その方がいろいろと都合がいい。
「 しっかし、D.S.Pをクビになるってどういう事だよ? おまえ相当使えない奴だったのか?」
透が微妙な顔で見つめる。
"D.S.Pをクビ"
これは一ノ瀬が透に言ったウソの口実。
いくら息子とはいえ、天狗だ、しるしだ、とかいうあたしの極秘情報は漏らせないって。
まあ、言ったとしてもそんな話、簡単には信じないだろうけど。
人間、シンプルな理由付けの方が納得するみたいだ。