SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


「 天使 美空。よろしく 」


マニュアル通りあいさつをし、口角を少し上げる。

すると、何故か教室中がどよめいた。

まじまじとすごくみんなに見られてる……


……あ、れ。

口角を上げると笑ったように見えるはず。

……変、 だったかな。


疑問に思いながらクラスを見渡す。 すると、廊下側の三番目の席に透の姿を見つけた。

一瞬目が合い、すぐにフッとそらされる。


「 じゃあ、天使さんはあそこの空いてる席に座って?」


先生の指差した、窓側の一番うしろの席に向かう。


「 やべえ、すげー美人!」
「 なにあれ⁉︎ 芸能人みたい!」
「 天使ってまさにそうじゃん! エンジェルだよ!!」


……? どういうこと?

やっぱり、なんか変だったかな。

あたしが座ってもまだクラスはガヤガヤとしていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「すごーい! 銀色~! ハーフって超かっこいい! うらやましい!」

「や~ん、ホントに天使みたいってゆ~か、小悪魔顔だよね~!」


休み時間、クラスの女子に囲まれる。


……? 小悪魔?

休み時間ごと囲まれて、お昼になる頃やっと落ち着いた。


「……ねぇ。 一緒に食べない?」


それまでずっと前を向いていた、前の席の子が振り向く。


「……?」


肩より上のウエーブした栗色の髪の毛。
小柄で丸顔の少し垂れ目の女の子。


「 みんなの勢いがすごくて……やっと話しかけられたよぉ〜 」


彼女がふんわりと笑う。
あたしも口角を上げると、彼女は頬を赤らめた。
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