SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


「あっ、あたし、工藤真希(くどうまき)っていうの。よろしくね!」


少し早口になりながら彼女が言う。


「ええっとお、あたしは鹿又奈津!(かのまたなつ)よろしくう~!!」


突然、もう一人顔を出す。

黒髪のショートヘア、日焼けした黒い肌。ほどよく筋肉のついた手足が頼もしい。


「 あまつかさん……あ、名前で呼んでもいいかなあ? 美空って…… 」


「 もちろん 」


「 わあ、うれしい! あたしたちの事も名前で呼んでね 」


「 うん 」


「 なあ~朝、一ノ瀬と学校来てたよね? 知り合いなん?」


こそっと奈津が聞いてくる。


「 あ~。ほんの、ちょっと 」


「 へえ、そ~なんだ? あたしたち、一ノ瀬とは中学ん時から一緒なんだけど、あいつ、なんかひどい事言わなかった? 悪気はないみたいなんだけど、一ノ瀬、人にも自分にも厳しいんだよなあ~ 」


奈津は頭をガシガシかいた。


「 もう、奈津は一ノ瀬くんを知らないだけだよ。本当は優しい人なんだから 」


語尾を弱めて真希が答える。


「 はいはい~。真希はあたしより、よく見てるもんな~? 一ノ瀬のこと 」


「 もう! そんなんじゃないってばぁ~!」


じゃれ合う二人の肩越しに透の姿が映る。


「 あ~。透は一本ってゆーか、すじってゆーか。似てるってゆーか、一ノ瀬ってゆーか 」


二人がポカンとあたしを見る。


「 やだぁ、美空ちょっと日本語おかし~ 」


「……?」
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