SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
それから、お昼を食べて、午後の授業を受けて、あっという間に放課後になった。
「 じゃあ、美空、また明日ね~!」
教室で真希と奈津と別れる。
真希はブラスバンド、奈津はソフトボールの部活だそうだ。
「…………」
一人になったあたしは、まだ人がまばらに残る教室の景色をぼんやり眺めていた。
……学校、か……
小学校も、高校も、授業内容は別として、
教室の雰囲気というか、
物音や、声や、温度や、におい……
いろいろ、思い出した……
なんか、一緒……だったな。
忘れていたものが、何ごともなかったように、すっと胸に収まった感じだ。
もう少しこの景色を眺めていたいけど……
「……え、」
気付くと、あたしの周りにはたくさんの男子生徒……
「 あっ、あの、しゅっ趣味はなんですか?」
「 授業分かった? 分からない所があったら教えてあげるよ?」
「家はどのへん? 送って行こうか?」
……なんか、みんな顔が必死だ。
「……あ〜、」
あたしは困って首を傾ける。
すると、
「 天使! これ残りの教科書だってよ!」
人だかりをかき分け、透が教科書の束をドンッとあたしの机に置いた。