SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「 明日使う分残して、あとはロッカーに置いとけよ。ロッカーこっちだから 」
透はあたしを立たせると、また教科書の束を持って廊下へと促す。
あたしもバックを持ってついて行った。
「 あのさぁ、おまえ、終わったんならとっとと帰れよな 」
ロッカーの前で不機嫌そうに透が言う。
「 あ~。だって、雰囲気がって思って。学校、思い出したら、なつかしいの思って、帰れなかった 」
「……は? おまえやっぱおかしいか? 日本語 」
「……?」
ロッカーに教科書をしまい、鍵をかける。
「……つーか、うまくやってけそーじゃん? 学校 」
壁に背をもたれながら透が言う。
「……え?」
「 友達も、出来たんだろ?」
透は、その切れ長の目であたしをじっと見つめてくる。
「……まあ、できた 」
あたしが答えると、透は“ふっ”と微笑んだ。
「……それと、さ 」
透がスッと真顔になる。
「 今朝は悪かった。あんなこと言って 」
「……? なんだっけ?」
「…………」
「……透?」
「……とにかく。 明日からもちゃんと来いよな、学校 」
少し目を伏せ、透は教室に入って行った。
……? ……まあ、いっか。