SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


それから、あたしはそのまま下駄箱へ行き学校を出た。

外は霧雨が降っている……


「…………」


あたしはてくてく歩いてゆく。

ひたすらてくてく歩いてゆき……

ピタッと、止まった。


「……家、どこだっけ?」


キョロキョロ辺りを見回してみる。

そこには朝通った道とは明らかに違う風景が広がっていた。


……はあ、よし。


あたしは切っていたESPのスイッチをオンにする。

ESPのような超感覚的知覚(第六感)は訓練すればスイッチのオン、オフが出来るようになる。

あたしは武田トレーナーに、学校のような大人数がいる場所ではセンサーのスイッチを切っておくよう指導されていた。

そうしないと、いろいろ人の念を感じ取ってしまって、収集がつかなくなるから。


"ジジジジ"


目と目の間の“第三の目” が覚醒する。

ESPの種類はたくさんあるけど、その中でも"探査"があたしは得意だった。

探査とは、自分を中心に、生物や物のサイズ、種類、距離、方向などを特定し、いろんなものを探し出すESPの能力の一つだ。


「……こっちか 」


あたしは再び歩き出す。

すると、


"ジワ~ッ"


突如、手のひらに感じる違和感。

右手を開くと“五” の字に似た“しるし” が浮かび上がっていた。


「……近い 」


あたしは方向を変えて、細い脇道へと入っていった。
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