SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
◇ハンカチの木と少年と
霧雨がやみ、外はモワモワとした空気が漂っていた。
大通りに出たあたしは、困った事態に遭遇していた。
「 ん? ……あれ?」
ESP探査が働かなくなってる。
ここにきて、また不安定?
「 はあ、」
家、どこだっけ?
仕方なくあたしはゆっくり歩き出す。
ただひたすら、歩いて……
歩いて、歩いて……
「……?」
ふと、あるものが目に留まった。
「……あ、れ……」
目を凝らしてそれを見つめる。
……やっぱり。
もっと近くで見てみたい……
湧き上がる衝動を抑えきれず、あたしは走り出していた。
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着いたのはすごく大きな屋敷の前だった。
周りに誰もいないのを確認する。
分厚い壁と厳重な門をよじ登り、あたしは広い庭園の中に入って行った……
「…………」
吸い寄せられる様に、あたしはある大きな木の前で立ち止まった。
木には青々と葉が茂り、葉の間にはとても大きな白い花がいくつもいくつも垂れ下がっている
それぞれが雨の雫をまとわせて、まるで美しい宝石のようにキラキラとした輝きを放っていた。
「……きれい……」
あたしはその場を動けずにいた。
だって遠い記憶の思い出が、また一つ、蘇っていたから……
すると、
「 何してるのっ!」
後ろから強い声が飛んできた。
「 ! 」
我に返って振り返る。
そこにはブラウンの髪をした、小学生くらいの男の子が立っていた。