SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

「……あ、」


そういえばあたし、勝手に入って……

……どうしよう。 

今度は困って動けない。


「「…………」」


そのまま、じーっとお互い見つめ合う。

じーっと、じーっと、見つめ合う。

あたしも、少年も、固まったようになって、

どうしたらいいか、わからない……

すると、


"ジワ~ッ"

手の平がうずいた。


「……⁉︎」

慌てて右手を広げてみる。 でも、


「……あれ、」

浮かんでいたしるしがさっと消える。


……? ……なんで?


あたしは首を傾ける。

……と、


「……てん、し?」


囁くような声が聞こえて、あたしは少年に視線を戻した。


「……え?」
「……っ、」


少年はハッとして目を泳がせる。

その後、少しためらいながら、ゆっくりあたしに近づいた。


「……なに、してるの?」


さっきよりもだいぶ弱い口調で言ってくる。
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