SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「……あ、」
また、あたし……
下手な説明をしてしまったかも……
少年の顔をチラッと見る。
その目はまっすぐあたしを向いていた。
「「…………」」
流れる沈黙……
そして、
「 へえ。おんなじ木、家にあったんだ? 一緒だね。オレの母さんもこの木が大好きだった 」
少年がそう言葉を返した。
……あれ。
話が、通じてる?
「 好きだったってことは、もしかして、もう亡くなったの? お母さん 」
「 ああ……う、ん……」
話の内容より、あたしは自分の説明が通じた事に驚いていた。
……なんで……
「 へえ、それも一緒。オレの母さんも死んだんだ、病気でね 」
少年がまたハンカチの木を見上げる。
そこであたしはやっと少年に意識が向いた。
……え、
今、お母さん死んだって、言った?
「……少年……」