SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
……ああ、
……またその表情……
まるで色を奪うかのように、寂しさの影が少年の体を包んでる。
「…………」
あたしは、何故か無性に、むずむずして……
なんだか、とっても、たまらなくなって……
「——しょ、少年っ!!」
「……! ……わっ!!」
少年に、タックルした。
「 ちょっ、なんなのいきなりっ!」
バランスを崩し、尻もちをつく少年。
あたしも地面にひざをついた。
「 吹き飛ばしてやった 」
……寂しさの影を。
「 はあ? おねーさん頭大丈夫⁉︎」
動揺する少年。
でも、あたしは
まだ、むずむずして……
「 少年っ!!」
前のめりになり、少年の両手をがっちりつかんだ。
「……こっ、今度はなにっ!」
焦る少年……
あたしはズイッと顔を近付けた。
「……っ!」
固まる少年……
あたしは少年に、なにか言いたいような、むず痒い気持ちになった。
……でも、
なにも言葉が、出てこなくて……
「…………」
曇った気持ちのまま立ち上がる。
なんだろう、この、モヤモヤした感じは。
あたしには、わからない……
「……帰る 」
何故か気持ちが沈んでいた。
日が陰っているせいかもしれない。
そうだ、もうすぐ日が沈むし。だからあたしの気持ちも沈むんだ。
そう片付けて、
あたしは少年に背を向ける。
……が、
「 あたしの家、どこ?」
重要な事を思い出した。