SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
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「 一体、どうしたと言うんです 」


マンションへ帰ると一樹が来ていた。

一樹はビショビショになったあたしを見つめてる。


「 ほらほら~早くふいて~!」


ユリが大きなバスタオルをあたしにかけ、あたしはそのまま自分の部屋でシャワーを浴びた。

部屋着に着替え、みんなのいる共有リビングルームに移動する。


「それでヨオ~、ミクがよお~、」


黒木が身振り手振りを交えながら一樹とユリに何やら話している。

あたしが顔を出すと、三人の顔があたしに向いた。


「おお⁉︎ 大丈夫かぁ、ミク? ちゃんとあったまったかぁ⁉︎」

「 うん。大丈夫 」


あたしは一樹の隣に腰を下ろす。


「 今日もうまく活躍出来たみたいですね 」


一樹は目を細めて微笑んだ。


春から住み始めたマンション。
でも、一樹はこのマンションには住んでいない。

黒木が一緒に住もうと勧めても、一人の方がしっくりくると、かたくなにそれを断った。

でも、時間をぬっては、こうしてあたしの様子を見に来てくれる。

D.S.Pではすごく活躍してて、頼りにされてて、相当疲れているはずなのに……



「……でも、安心してるのよ。しるしが導くって言うから、初めはどんなに危険な事させられるんだろうって、ビクビクしてたけど…… 」


ユリがあたしにココアを手渡す。


「 んあ~、そ〜なんだよなぁ。事故にひったくりに変質者に空き巣……事件としたら割と軽いモンばっかりだもんなあ? まあ~、天狗もわかってンじゃねーの? かわいいミクに危険なマネはさせられねえってよお 」


丸めた手をあごに当て、黒木は白い歯を見せた。


……?

隣の一樹は、何か腑に落ちない様子だ。


「……いつき?」


あたしの視線に気付くと、一樹はすぐに笑みを作る。

ポンポンとあたしの頭に手を置いた。
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