SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


「ところで美空、学校はどうです?」


一樹が突然話題を変える。


「……どうって? 」


「 何か困った事とかありませんか?」


……困ったこと?

特にないけど、しいていえば……


「 あ~。授業がわからない。どこがわからないのかわからない。どこがわからないと思う?」


「……ん?」


一樹が首を傾ける。


「 もお~、ミクはぁ、学校の雰囲気だけを楽しめばい~んだぞお? 授業なんてどーだってい~んだからな? なあイツキ!」


「……はぁ、」


「 美空、今はとにかく楽しめばいいのよ! 華の女子高生だもん♪ 友達と喋って、遊んで、恋をして…… 」


「 ダア~~~ッッ!!」


黒木の大声に、思わず飲んでいたココアを落としそうになる。


「 もうっ! 誠さん! ビックリするじゃない!」


「 ユ、ユリ! 今なんて言ったあ⁉︎ 恋だとお⁉︎ ミクが、恋⁉︎」


「そおよ! 女子高生だもの、当たり前じゃない! 美空だって恋ぐらいするわよ!」


ユリは呆れた顔で紅茶をすする。


「 み、み、ミク……。そ~なのかぁ? 恋、してるのかぁ……?」


黒木が泣きそうな顔であたしの前にひざをついた。


「……恋? なにそれ。知らない 」


「……シラナイ? ……ふぅ~。そおか~、知らないかあ~ 」


「 なあに? 一樹、知ってる?」


あたしは一樹に聞いてみる。


「……そうですねぇ、」


一樹は困ったように視線をそらした。


……?


「 今は分からなくても分かる時がくるわよ♪ そんなものよ~恋なんて。 いいなぁ~美空は。これからいっぱい恋するんだろうなぁ~。 あっ! 初カレ、透くんとかどうかしら? あのコ指揮官に似て真面目だし、かっこいいし、彼氏なら最高じゃない⁉︎」


うっとりしながらユリが言う。


「 ユリさんっ!」

「 ダア~~~ッッ!!」


また、黒木が絶叫した。
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