SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
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「 マニュアル其の３４６、男には３メートル以内近づくな。　マニュアル其の３４７、男に声をかけられても無視をしろ。　マニュアル其の３４８、男が告白してきたら有無を言わさずブン殴れ…… 」


あれから黒木は、何かブツブツ言いながらパソコンに何かを打ち込んでいる。


「 もしかして、また増える？　マニュアル 」


すると一樹とユリは、やれやれと首を横に振った。


「 あれは……つまり、黒木さんの願望と言いますか…… 」


「あんなもの、無視していーのよ美空。誠さんのウソのマニュアルなんだから！」


ユリはジロッと黒木をにらみつける。


……なんだ、ウソか。


……？ なんで？


黒木は暗い顔でじっとパソコンの画面を見つめていた。



「……ところで美空、あれから透くんとは何か話しましたか？」


「……透？」


……ああ、

あれからって、あれか。初登校の日の。

あたしはあの日、マニュアル以外の事を喋ってしまったと、一樹に話していた。


「 ううん、全然 」


「 そうですか 」


そう言って、一樹はクッとメガネを押さえる。


一樹、ユリ、黒木は透と顔なじみだ。
どうやら、だいぶ前から一ノ瀬を通じて知り合っていたらしい。


「 大丈夫よ、一樹くん。最初は私も加齢停止の話をしたって言うからヒヤッとしたけど、結局はそれで納得したみたいだし、透くんも。

かえって良かったんじゃない？　美空の能力は加齢停止。でもそれじゃあD.S.Pでは何の役にも立たない。だからD.S.Pをクビになった。

透くんにしてみたら、何の疑いようもない完璧な理由だわ 」


カラッとした態度で、ユリはにこっと笑ってみせる。



「……まあ、そうかもしれませんが 」


一樹は、何か考えるように腕を組んだ。


「もう、一樹くんも心配性なんだから 」

「 わたしはただ…… 」


その時、


＂リーン、リーン、リーン……＂


リビングの隣の会議室から高いベル音が響いた。
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