SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「 え~、呼び出し? 今日はゆっくり出来ると思ったのに 」
ユリがパタパタ会議室へと走ってゆく。
会議室はまるでD.S.P支部のようだった。
会議室のモニターは直接D.S.P本部へと繋がっている。
本部からの連絡はもちろん、あたしもこのモニターを通して一ノ瀬に報告などをしていた。
「一樹くん! 誠さん! 指揮官が今すぐ本部に集まれって! 厄介なボディ変化兄弟が現れたらしいわ! 今回はかなり手こずるかもって!」
ユリが慌てて身支度をする。
黒木と一樹が途端にスッと真顔になった。
「ごめんね美空。たまには一緒に晩ごはん食べたかったけど…… 」
「 ううん 」
「悪いなぁ~ミク。夜はほとんど一緒にいてやれなくてよお。とっとと事件片付けて戻ってくっから、おとなしく待ってンだぞ?」
「 うん、気をつけて 」
「早く片付けば良いのですが……もうすぐ満月ですし 」
「一樹、あたし、もう満月は一人で大丈夫だから 」
それから三人は急いでマンションを飛び出して行った。
「…………」
室内が急に静かになる。
大変だな、D.S.Pも……
あたしはバフッとソファーに寝転がった。
夜、あたしは一人になる事が多かった。
それはD.S.Pの事件が夜に集中するからだ。
それに、大きな事件ともなれば、D.S.Pのメンバーは早期解決の為、本部にこもる事になる。
黒木とユリが数日、家に帰らないのも、そう珍しい事ではなかった。