SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「 怖いでしょ? 人間じゃないんだもん。それに……」
「 それに、なんだ?」
「 最近は、お地蔵様だと思われてる。みんなお供え物、持ってくるんだ 」
「「 ブッ! 」」
二人が今度は吹き出した。
「 おいっ!」
おじさんが二人を睨みつける。
二人はきゅっと口をすぼめた。
「……ンン 」
おじさんは口元に手を当てると、今度はあたしの方に正面を向く。
「……ワシは、 ……なんだ、」
言葉を選ぶようにあたしに言った。
「 その、嬢ちゃんは普通の人間に見えるぞ。怖いとは思わん 」
……?
「 みんなと違うのに? こわく、ないの?」
「 ああ、怖くない 」
「 ちゃんと人間に、見えてる?」
「 ああ、見えとる 」
強い瞳でおじさんが見つめる。
あたしはふわっと、どこか胸の中をくすぐられたような気がした。
「 よかった。あたしも全然怖くない。おじさんたち 」
何故か自然に笑顔になれていた。
「ブハハハハッ! おもしろい嬢ちゃんだ 」
おじさんたちも笑っていた。
四角顔のおじさんは、名前が玉三郎と言った。
好きに呼んでくれと言うから、あたしは"玉ちゃん"と呼ぶ事にした。
何故か二人は引きつってたけど……
……あ、その二人は柳と小暮って言っていた。
呼び捨てか⁉︎ と、なんか微妙な顔してたけど
……まあ、なんというか、
友達になった。
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「……ふぁ、」
部屋に戻ってから、あたしは急に眠気に襲われた。
……寝ようかな。
そう思い、ベッドに横になった途端
"ジワ~ッ"
右手のしるしがあたしを呼ぶ。
……?
夜にしるしが反応するのは初めてだ。
しかも、なんか、嫌な感じ……?
ぼーっとしながらあたしは意識を集中させる。
——シュン!
頭に浮かぶその場所へとすぐに瞬間移動した。
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瞬間移動した場所は川べりのトンネル付近だった。
……ん?
なにやらトンネルの中が物々しい。
あたしはパーカーのフードを深くかぶり、そこへそっと近づいた……