SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


……殺してやる?

ずいぶん物騒な少年だな。


「 へへっ、ビビッてんじゃねーぞ 」


ナイフを手にした途端、勝ち誇ったようにニヤつく少年。


……? あたしは意味がわからない。


そんなナイフ一本で、突然強くなった気でいるのだろうか……


——タ、

あたしは構わず距離を詰める。


「……ッ!」


そんなあたしの行動に、少年の顔が変にこわばる。


「……テメーッ!!」


大声を上げながら、少年はナイフを振り下ろした。

あたしはそれをヒョイッとよける。


"ガッ! ガガガ……ズゴッ!"


素早く拳の連打を腹に打った。


——カラン……


力なくそこに倒れる少年。

他の少年たちも折り重なるようにそこら中に転がっている。


……よし、全部片付けた。


すると、



"……ボボボボボボ~……"


遠くからたくさんの低いバイク音が聞こえてきた。


……?


意識を集中させてみる。

どうやら、最初に殴られていた少年の仲間たちのようだ。

あたしはチラッとうしろを見てみる。

少年は、少女に体を支えられながら、こちらをじっと見つめていた。


「…………」


あたしは少年に背を向ける。


「……おい、おまえ…… 」


背中ごしに少年が何か喋ったような気がしたけど、あたしは気にせずその場をあとにした。


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