SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「ああ、だめ。血管が細すぎて血液採取ができないわ…… 」
SAT内にある特別救護施設。
先ほどから、かっぷくのいい女性医師がぼやいている。
「でも、不思議ねぇ。こんな状態なのに、脈も呼吸も異常なし。なんで生きていられるのかしら?」
一ノ瀬は気を引き締めた。
少女といえど、こいつはBlue dollなのだ。自己を守る為のPSYが働いているとしたら、常人以上の生命力を持っていても不思議ではない。
「 一ノ瀬さん 」
“シャ” とカーテンが開いて、白いシャツを着た端整な顔の男が姿を見せる。
「 一樹、こいつが例の少女だ。こいつがどんな能力者で何をしていたか。中で何があったのか、探ってくれ 」