SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
……なんで?
いつもならすぐに視線をそらすのに。
今は少しも外す事なく、まっすぐあたしを見つめてくる……
「 困った時は、頼れ 」
透はふっと目を細める。
その顔は、悲しいような、怒ったような、何とも言えない表情だ。
「……まあ、無事で良かったよ……」
「……うん……」
「…………」
「……とおる?」
どうしたんだろう。
今日の透、なんか変……
「……じゃ、オレは帰るから。ちゃんと、戸締りだけはしろよな 」
その後、スッといつもの顔に戻り、透は玄関へ歩いていく。
「……じゃあな」
——パタン、
扉が閉まり、あたしは一人部屋に残された。
……?
なんだったんだろう。
あたしはリビングのソファにダイブする。
「…………」
頼るなって言ったのに頼れと言う
厳しい目だったり、悲しい顔だったり……
訳がわからない。
なにか胸がモヤモヤした。