SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
◇透の矛盾
"……カリカリカリ……"
シャーペンを走らせる音が教室中から聞こえる。
机に伏せるようにして、みんな紙に字を書きこんでゆく……
7月に入ってすぐ、学校は期末テストが行われていた。
……はあ、
あたしはかなり、ウンザリだ。
土、日をはさみ、今日でテストも四日目なのだ。
一体なにが楽しくて、ずっと机にはりついてなければならないのか。
なんでこんなにテストばっかり続くのか。
訳がわからない。
しかも、なんなの? 古典漢文って。
「……はあ、」
仕方ない。テストも今日で終わりだし。
もうひとがんばり、するかな。
あたしはテストの解答欄にシャーペンをまっすぐ垂直に立て、
目と目の間を中指で押さえる。すると、
"……ジジジジ……"
ぼんやりと、解答欄に赤い文字が見えてくる。
あたしはそれを、なぞって書く。
……まあ、
がんばるといってもこの作業。
ESPをがんばってる。
だって勉強なんて分かるわけないし。
だからって白紙で出す訳にも、いかないし。
"……ジジジジ……"
選択問題なら完璧だ。
それ以外は6~7割は見えるだろうか。
……良かった、
テスト前にESPが戻ってきて。
バリアーもすぐに復活したし、
あたし、今はすごく調子がいい。
「……ハア~、」
前の席から聞こえるため息。
真希は悩ましげに、しょっちゅう首を曲げていた。