SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「 おい、帰るぞ!」
テストが終わるなり、透があたしの席にやって来る。
あの日から、透はちょっと変なままだ。
朝はマンションの前で待っていて、あたしと一緒に登校する。
帰りはこうしてあたしの席にやって来て、やっぱり一緒に帰るのだ。
……まあ、
ユリに頼まれたってゆーのもあるみたいだけど……でも、
「「…………」」
透はあたしと目が合っても、すぐにはそらさなくなった。
今もあたしと目が合ったまま……
「なあ〜ホントに付き合ってねーの? 二人?」
奈津があたしと透を交互に見ながら聞いてくる。真希も微妙な顔で透を見た。
一緒に学校来たり帰ったりするようになってから、みんながしょっちゅう同じ事を聞いてくる。
「 だから違うって言ってんだろ! 別にそんなんじゃねーから!」
ポケットに手を入れ、透は横目で奈津を見る。
「でもさ~マジで本当のトコはどうなん? 一ノ瀬、もう美空にメロメロだったりして~⁉︎」
「 はあっ⁉︎」
透がやたら大きく反応する。
教室に残ってるみんなの視線が透に向いた。
「……っ! そんな訳ねーだろ! おい、てめーいい加減にしろよ!」
「だってあやしーもん。なあ真希~?」
「……え? ……う、うん、」
真希と奈津がジトッと見る。
「そーだそーだ! 一ノ瀬! ホントのところど~なんだよ~!」
「エンジェル一人占めなんて許さねーぞ!」
「ショック~! 一ノ瀬くんって天使さんみたいなハーフ美人がタイプだったの?」
……?
気付けば、周りに人だかりが出来ている。
透はダルそうにため息をついた。