SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「 ねえ玉ちゃん、あまのじゃくってなに?」
「……あん?」
——夜。
創作料理レストラン"彩"。
あたしは、血の滴るような分厚いステーキをほお張る四角顔のおじさん、玉ちゃんにあまのじゃくについて聞いてみた。
くぼんだ空間の二席のテーブル席。
最近はあたしも大きい方のテーブルで、玉ちゃん、柳、小暮たちと一緒に夕食を共にするのが日課となっていた。
「 クジャクの仲間?」
「……ああん⁉︎」
玉ちゃんは口をモグモグ動かしながら片方の眉毛をつり上げる。
「違えぞ美空、あまのじゃくっつーのは、アレよ、」
「ああ、何でも逆の事をしちまう奴のこった」
柳と小暮が本日のサラダを食べながら答えた。
「……それが、どうかしたんか?」
「あ〜、うん。自分でそう言ってたやつがいて、訳がわからないんだ。一人で学校来いって言ったのに、一緒に来るし、帰りだって 」
あたしは細長いグラスに入ったカラフルなリゾットをスプーンでぐるぐるかき回す。
「 頼るなって言ったのに頼れって。さっきだってなんか変。あいつ、なんか変なんだ 」
「「 どいつだよ? 」」
柳と小暮がケタケタ笑った。
「……ふん。いけ好かねえな。物事は白黒はっきりつけるのが道理ってもんよ 」
玉ちゃんが口元をナプキンで押さえながら言う。
「……道理?」
「まあ、ワシらは特にな 」
玉ちゃんの言葉に柳と小暮はうなずいた。
「……? 」
「おい、そのあまのじゃくって、」
"ピコン"
柳が何か言いかけた時、ポケットの中で音が鳴る。