SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「……あ、」
あたしの赤い電話のやつ。
「……? どうした美空?」
「……うん、」
つい電話って言ってしまうけど、これはケータイ? スマホ? だっけ?
みんなは手放せないって肌身離さず持ち歩くけど、
あたしはイマイチそれが理解できなくて、部屋に放置している事が多かった。
黒木やユリにさんざん持ち歩くように言われて、やっと最近その習慣が身についた。
たまにコロッと忘れるけど……
「……?」
これは電話じゃない。
どうやら"メール"というものらしかった。
「 ねえ玉ちゃん。メールってどうやって見るの?」
「 ああん⁉︎ 美空はメールの見かたも知らんのか?」
「うん。電話の受け方と充電の仕方は覚えたけど……」
「……っとに、世間知らずやのう。どれ、貸してみい 」
玉ちゃんはあたしの電話をいじりだす。
「 ここをこうして、こうだ。 ……ほう。湧人っちゅー奴から、テストおつかれさま、だそーだ 」
「……ふ~ん、そっか 」
返事をしながら、あたしは色の混ざったリゾットをもぐもぐ食べ進めた。
あれから、湧人とはよく会っている。
まあ、ほとんどはあたしがお婆ちゃん家に遊びに行く。
相変わらずお婆ちゃんはあたしを天女だと思ってるけど、なんというか……
あたしはあの空間が好きだ。
ゆっくりと時間が流れる縁側で、お婆ちゃんの笑顔とか、湧人との自由な会話とか……
なんだかとても癒されるのだ。