SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


一樹の長い指が少女の額にふれる。


"……リ、リリリ……"


緑色の光が一樹の手を覆ってゆく。

一樹は目を細めた。さまざまな映像が瞬時に頭の中に入ってくる……


「……っ、」


次第に一樹の表情がみるみる曇る。


"リリリ……リリリ……"


「……っ、」


"リリリリリリリッ……"


「……っ!」


一樹は少女から手を離した。


「……ハア、……ハア、」


手がかすかに震え、息があがっている。


「おい、どうした一樹!」


一ノ瀬はこんな一樹を見た事がない。

いつも涼しげな表情で、何でも器用にこなしてしまう一樹。

そんな一樹が顔をこわばらせ、明らかな動揺を見せている。


「一樹、こいつがお前に何か!」
< 19 / 795 >

この作品をシェア

pagetop