SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
目を閉じれば、何をどうすればいいのかが自然に分かった。
「…………」
寝ている一樹を見下ろす。
そして、
——グッ!
右手を広げ、強めに一樹の額に押し付けた。
「……ん、」
一樹のまぶたがピクッと動く。
……ふう、
あたしは呼吸を整えて、
「 ゴミだけ、出ろっ!」
合わせていた右手を一気に手前に引っぱった。
"ズザアアアアッ……!!"
瞬間、黒い砂粒のようなものが一樹の頭部から噴出する。
それは帯状に、ところせましと広がった。
帯はやがて形を作り、荒れ狂う龍のごとく飛び回る……
"ズザザッ! ズザザザザ~ッ!!"
「……っ!」
一樹がパッと目を開けた。
「……っ、……な、にっ、」
それは、夢か現実か……
異様な光景に、一樹は呆然と立ちすくむ。
すると、
"パアアアアアアアアッ!!"
突如、砂粒の一つ一つが光を放ち、おびただしい数のスクリーンが部屋にバーッと広がった。
「……!」
"……ザッ……ザザッ…… "
"やだあ~、もうパパったらあ~"
"ブオンッ……キキッ!"
"いいから私の言う通りにしなさい!"
雪の上の足跡、夜のネオン、工事現場、畑のトマト、バイクのレース、クリスマスツリー、笑った顔、怒った顔、泣いた顔……
スクリーンの一つ一つに、いろんな人の顔や物、風景が入れ代わり立ち代り映し出される。