SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


「……こ、れは……」


思い当たるふしがあるように、一樹はスクリーンの一つ一つを眺めてゆく。


「……美空、 ……これは……」


「…………」


「……どういう事です、 一体……」


「 恩返し、させて 」


「……は、い?」


困惑する一樹の前であたしは固く両手を組む。


「……っ、」

意識を高め、


「……んっ!」

——ゴト、

目の前に四角い木箱を出現させた。


……よし。

今度はスクリーンに手をかざす。

指先に意識を集中させると画面がチカチカ点滅し……


"ピッ……パリッ、パリン! パリン!"


直後、次々にスクリーンが割れていき、破片が粉々に砕け散った。


"……ズザザザザザザ~!!!"


砕けたものがもとの小さな砂粒となり、また、龍のごとくうねりだす。

広いこのリビングが急に狭く感じるほど、それは巨大で荒々しく、ぐるぐる部屋を旋回した。


「……っ、」

呆気に取られたままの一樹……


「…………」


あたしは静かにタイミングを図っている。

目の前にはさっき出現させたあの木箱。


……!

「——ハッ!! 」


狙いを定め、あたしは叩きつけるように両手を大きく振り下ろした。


"ズザザザザザザザザッッ〜!"


凄まじい音と共に龍が木箱の中へ吸い込まれ……


——ガコッ! ジャラッ!


全て入った所でフタが閉じ、鎖が箱を縛り上げる。


( 消えて!)


心でそう念じれば、あっという間に木箱はそこから姿を消した。
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