SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
一ノ瀬は少女に掴みかかる。
「いいえ、」
一樹は右手を上げて一ノ瀬を制止した。
「……すみません 」
一樹はゆっくり息を整えると、一ノ瀬の顔を見て答えた。
「一ノ瀬さん。この子の記憶は、偽造されたもので塗り固められています 」
「……偽造?」
「ええ。おそらくは敵のテレパス能力者によるものでしょう。それが何年もの間、何重にもかけられている。それと…… 」
一樹は、端々に映し出された信じがたい映像を思い出し、フウ~ッと重くため息をついた。
「一樹、なんだ? どうしたんだ 」
「……すみません。実は、偽造された記憶の隙間に、Blue dollの内部の様子が見えたのですが、少し混乱してしまって…… 」
「なんだ一体! なにが見えたんだ!」
一ノ瀬が食い入るように見つめる。