SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


「……美空、 一体……どういう事です 」


静けさを取り戻したリビング。

一樹が驚いた顔で見つめている。 でも、


……まだだ……


("伯耆坊、まだ行かないで!")


あたしは心で訴えていた。

力を繋ぎとめるように両手をガッチリ前で組む。


——"これ以上は危険だ"——


頭の中で警告する声が聞こえる。


「……美空?」


何か感じ取ったのか一樹が顔をしかめた。

そんな一樹を見つめながら、あたしは手と頭に神経を集める。


……っ、

猛烈な圧迫感に急に呼吸がしづらくなる。


「 ハアッ、」


……そうか……


ここからは先は、どうやら命を削るような作業らしい……


"バリバリッ!!"


電流が流れるような衝撃が走る。


「……んんッ、」


あたしの器ではこれ以上は耐えられない、

そう言っているかのように、体がギシギシと鈍い音を立てている。

急に足に力が入らず、あたしは前に倒れこんだ。


「 美空! 」


すかさず一樹が抱きとめる。


「……ハァッ、ハァッ、」


息が乱れる。

脳が、内臓が、筋肉が、骨が、

衝撃を堪えるように痙攣している。


「 美空っ! どうしたんですっ!」


ピシ! と、血管の浮き上がった所が切れ始め、ヒビ割れたように体中に赤い模様がついてゆく……


「 美空っ!!」


……ああ、


あたしの器は、弱い。


せっかく伯耆坊が力を貸してくれているのに。
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