SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「……ハアッ、ハアッ、」
……でも、これだけは……
……一樹の役に立ちたいの……
「……っ、」
最後のつかえを取るように、あたしは体に力を込める。
「——フッ!」
“ カラン ”
息を吹きつけ、小さなレンズを出現させた。
「……いつ、き、 」
すぐさまそれを一樹に渡す。
すると、
"……カッ……!!"
青白い光を放ち、レンズが一樹の中に吸い込まれた。
「……っ!」
手のひらを見つめながら一樹が何か探っている。
次第にその目は大きく見開き……
「……美空……あなた、」
驚きと困惑の表情があたしを見つめる。
「……今度から、必要なものだけ、レンズが導いてくれるよ……」
言いながらあたしは目を閉じる。
——"もう限界だ"——
また頭の奥で声がして、しるしはさっと消え去った。
「 美空っ!」
一樹が耳元で呼びかける。
……ああ、もう、だめだ……
何かの副作用のように急激に襲う倦怠感。
ドクンと熱いものがこみ上げて、あたしはゴボッと血を吐いた。
「……美空っ!!」
一樹の声を聞きながら、
あたしは意識を失った……