SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
……? ……なんで……?
あたし、余計なこと、した……?
「 だって、一樹、弱ってた。あたし力になりたくて……」
「 わたしは大丈夫と言ったでしょう 」
「……だって、」
( ユリだって心配してた。いつか一樹の精神が崩壊するかもって。あたしも心配で……)
心の声を交えながらあたしは言う。
「 だからってあんな危険な真似! 一歩間違っていたらあなたの命が危なかったかもしれないんですよ!」
いつもの優しい一樹じゃない。
こんなにも一樹が怒るのは初めてだ……
「あなたの命を犠牲にしてまで、わたしは何かして欲しいとは思いません!」
「…………」
あたしは思わず視線を落とす。
「 恩返しが、したかった 」
今の正直な気持ちを一樹に言った。
「……はい?」
肩をつかんだ一樹の手が、腕をすべり、軽くあたしの手にふれる。
一樹は床にひざをついた。
( あたし、恩返しがしたかったんだ )
「……恩返し?」
「 だって、ずっとあたしは一樹に助けられてばっかりで 」
( 本当は、D.S.Pでも力を発揮して、一樹や、みんなの力になりたかったのに、)
「 でも、あたし、ひどい不安定。しるしはD.S.Pじゃだめだし、」
( ずっと胸のあたりが苦しかった。一番助けたい人たちに何でなにも出来ないんだろうって。だから昨日はただ必死で、自分がどうなるかなんて頭になかった、あたしはただ!)
「 一樹の力になりたかった 」
しばらくして、
「……ハァ、」
一樹はひとつ、ため息をつく。
あたしの両手をぐいっと引くと、ぎゅっとあたしを抱きしめた。
「……?」
抱え込むように頭と背中に腕がまわり、すっぽり一樹に包まれる……
「……あなたに何かあったら、わたしはどうしたらいいんです……」
一樹は消え入りそうな声を出す。