SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「……いつき?」
「 美空の気持ちは分かりました。でも、わたしの為にあんな危険な行動は二度としないで頂きたい……。 わたしは、わたしのせいで誰も犠牲になどなって欲しくはないのです 」
……!
あたしの中に、なにか悲しい感情が流れ込んだ気がした。
一樹がハッと体を離す。
……?
……なに……今の……
「……いつき?」
目を泳がせ、一樹は前髪をかきあげる。
そのまま、今度はあたしの隣に腰をおろした。
「……約束して下さい。もう二度とあのような事はしないと。わたしの為に自分を犠牲にしたりしないと 」
うつむき加減に一樹が言う。
「…………」
あたしは少し考えて、
「 約束は、できない 」
そう、はっきり口にした。
「 ! 」
一樹の表情がまたこわばる。
でも、あたしは構わず言葉を続けた。
「 また、一樹が苦しんでいたら、やっぱりあたしは同じ事をすると思う 」
「 美空っ!」
また“ガッ”と肩をつかまれる。
「 何故です! わたしが嫌だと言っているでしょう!」
「…………」
「 約束しなさい! もう二度とあのような事はしないと!」
「 できない 」
「 美空っ!」
一樹の手があたしの前をさ迷う。
「 約束できないのなら、わたしは……」
ためらうようにした後、一樹は冷たい光を目に宿す……