SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


……あ、


……その目、知ってる……


……なんだ、そっか……


あたしは分かってしまった。


一樹が何をしようとしているのかを……



「 “ 記憶操作 ” するの?」


あたしはぽつりと言葉をこぼした。

ピタッと一樹の手が止まる。


「 それとも、“ 行動操作 ”?」


「…………」


「 わかるよ一樹。だってカイドウと同じ目してる。あのBlue dollのカイドウと同じ目……」


「……っ!」


我にかえったように一樹はハッと息をのんだ。


( あたしの中の一樹の記憶を消すの? それともあたしが余計な事をしないように暗示をかけるの?)


「…………」


「 でも、ムダだよ 」


あたしは一樹の手をつかんだ。


( だって、しるしが浮かんだら、しるしの力であたしはきっと思い出す。どんな記憶操作だって、あたしは誰も、何も忘れない )


「……っ!」


長い沈黙が続く……


しばらくして、


「……ハア〜、」


一樹は深くため息をついた。


「……まったく、どうしたら分かって頂けるのか……」


一樹はガクッと肩を落とす。

やるせないような、諦めたような、とても切ない悲しい顔……
< 206 / 795 >

この作品をシェア

pagetop