SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
……!
……まただ……
……そんなっ、 一樹……
そのあまりに悲しそうな表情に、初めてあたしはハッとした。
……なんで……
あたし、一樹にそんな顔、させたかった訳じゃない。
ただ、一樹を助けたくて、無我夢中で……
でも、違うの?
よかれと思ってした事が、かえって一樹を悲しませるの……?
"困っている人がいたら助けましょう"
遠い昔、誰かが言った。
それはあたしの中の正義。
そして、その通りにしてしまう単純な思考回路……
あたしの中身は成長が止まったままで、
いろんなところがまだ、小学2年のまま……なのかな……?
自分の正義を貫くことばかりが、
正しいとは、限らない……?
……う~ん、
なんだか頭がごちゃごちゃだ。
「……あ゛~、」
あたしは頭を抱えこむ。
「……美空? 」
一樹がふっと視線を合わせた。
「 もう! うまく言葉にできない!」
するとスッと一樹が手を取った。
(……なんですか?)
頭に一樹の声が響く。
あたしは一樹の目を見て伝えた。
( あたしは、いろんな事がまだ分からなくて、いいか悪いか、それだけでしか判断できない。 昨日の事もいいと思ったからしただけ。 でも、結果的に一樹を悲しませてしまったのは悪かったと……たった今、思ったんだ)
(……今?)
一樹が微妙な顔をする。
(……だから……その、言う通りにするよ。危険な事って、どういうのが危険なのかは、よく分からないんだけど )
( なんですって?)
( でも、一樹が悲しむなら、昨日みたいな事は、もうしない )
(……本当、ですか?)
( うん )
一樹が安堵した顔になる。