SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


————次の日。


ジリジリと焼け付くような暑さの昼下がり。

あたしはネイビーのシャツワンピースを着て、湧人の家まで歩いていた。


……暑い。


あたしは代謝が悪いのか、あまり汗をかかないし、顔も赤くはならない。

いわゆる冷え性なのだと思う。

そんなあたしでもやっぱり暑い。

ワンピースの下のインナースーツが余計に熱を上げていた。


これは、あたしの為に黒木が特別に作らせたものだった。

特殊な繊維で作られた軽くて薄い、丈夫な作りの黒い防護服。

不安定でバリアーが使えなくなっても大事には至らないようにと黒木があたしにくれたもの。


……実は、あの日、伯耆坊を呼び出してから、あたしはバリアーが使えなくなっていた。それに、


「……っ!」


あたしは横断歩道へ急いで走る。

そこへ、



"キキーーーーッ!!"


猛スピードで突っ込んでくる一台のダンプカー。


「……っ、」


あたしは間一髪、二人の子供を抱えて伏せる。



"……ガッゴオオオーンッ!!"


ガードレールや建物にぶつかり、ダンプカーは停止した。

脇に抱えた二人の女の子は、ガクガクと震えているものの、幸いケガはしていないようだ。


「 じゃあね 」


女の子たちにそう言って、あたしはその場を立ち去った。


……う~ん。


あたしは右手を広げながら、一人首を傾けている。


「…………」


昨日の事を思い出す……

湧人の家から帰る途中、右手のしるしが反応し、あたしはカッターで女の人を切りつけようとした若い男を蹴り倒した。

そして、さっき……


やっぱりだ。しるしの力が使えない。


事件を察知して呼びはするものの、サッとすぐにしるしが消えるのだ。


……なんで?


この間、ムリ、しすぎたせい?


相変わらず訳がわからない。


……まあ、でも、


昨日も今日もどーにかなったし。


なんかあたし、大丈夫な気がするし。


まあ、いっか。
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