SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
……?
誰かにも、同じこと、聞かれた事があるような……
すると、
"ワンワンワンッ!"
ついたての隙間から、茶色い犬が入ってきた。
……あ。
「 モコちゃん 」
あたしはモコちゃんを抱っこする。
モコちゃんはしっぽをブンブン振り回した。
「 おお? もう目え覚めたのか?」
「……テル 」
「 おめえ大丈夫かよ⁉︎ ……ったく、帰れって言ったのによぉ 」
ソファのヘリに腰を下ろし、テルはあたしの顔を見る。
目の前にいた少年は壁際の方へ移動した。
「……ねぇ。 ここ、どこ?」
「ああ、ここか? ここは扇龍のアジトだ 」
「 せんりゅう?」
「 族名だ。オレら暴走族だからな。結構有名なんだぞ?」
「……ぼう、そうぞく?」
「……で、ソコにいるのがオレらのアタマ 」
「月島奏太だ」
そう言って、少年は再びあたしに目を向ける。
「 ふ~ん。 つきしま、そうた 」
"ワンワンッ!"
「……つーかおめえ、平気なのかよ?」
テルがあたしの顔をのぞき込む。
「 なにが?」
「 なにが?って、奏太を前に普通でいられるヤツ初めて見たわ。大抵みんな、あの気迫にやられるんだ、震え上がっちまってよぉ。 おめえ、よっぽど鈍感なんだな 」
「……?」
言われてあたしは奏太を見る。
奏太は天を仰ぐような格好で、視線だけをこちらに向けた。