SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

「……よく、わからない。顔はテルより人間っぽいね 」


「……あ゛あ゛?」


「……ククッ、」


喉の奥で奏太が笑う。


「……おめえなあ、」


テルはジロッとあたしを睨んだ。


……?

なんか変なこと、言ったかな?

“ワンワン!”

首を傾けるあたしの前、モコちゃんは元気にソファーの上を走り回る……


その後、少しテルと話をした後、


「……美空、とか言ったな 」


いつの間にか隣に来た奏太が、真剣な顔で口を開いた。


「 今回は本当に悪かった。女を殴るとか、暗くて見えなかったとはいえ、男としてオレは最低な事をした。 テルも世話になったみてえだし、おまえには借りが出来た。しかし…… 」


「……?」


「 扇龍がおまえに関わんのはコレっきりだ。ここを出たら、オレらの事はきれいさっぱり忘れて欲しい 」


「……なんで?」


「……巻き込みたくねえんだ。オレらに関われば、嫌でも危険が付いて回る。女なら尚更だ 」


視線をずらし、奏太は苦い顔をした。


「……そういうこった。おめえとは、なんか名残惜しいけどな 」


テルはヘッと笑ってみせる。


「……ふ~ん 」


“ 二人とはまた会う ”


あたしにはそんな予感がしてるけど、なんとなくそれは黙っておく……

すると、


「 奏太! 哲平と陽菜がまた覇鬼のヤローにっ!」


金髪頭の少年が息を乱して飛び込んできた。


「……チッ!」


一瞬にして場の空気が凍りつく。


「 富塚通りだっ! 急げっ!」

「 ああ! すぐ行く!」

「 美空、悪い。じゃあな!」


慌ただしく、テルと奏太が走って行った。
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