SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
……?
ガヤガヤしていたのに、急に室内が静かになる。
「 帰ろう、モコちゃん 」
あたしはモコちゃんを抱き上げて、ついたての向こうに足を進めた。
ところが、
「…………」
……なに、ここ……
思わず足が止まってしまう。
広い室内には無造作にいろんな物が置かれていた。
ベンチ、マネキン、ダンベル、ベッド、消化器、ロッカー、ブロック塀、バスケットのゴール、自動販売機、お店の看板、道路標識……
そして、
「 あっ!」
あたしは"バス停"を発見した。
「「……ちわっス! 」」
二人の金髪少年が姿を見せる。
たぶんまだ中学生……だろうか。
「 あの~、自分たち、美空さんを家まで送るよう言われたっス 」
「 たっス 」
「……送る? なんで?」
「……なんでと言われましても、総長がそうしろとの事ですので…… 」
「 総長の言う事は絶対っス!」
「それに、夜道は危ないっス!」
「美人は狙われるって決まってるっス!」
「 あ! もしかして頼りないとか思ってます?」
「 大丈夫っス! 変質者の一人や二人、オレたちがボッコボコにしてやりまっス!」
やたら使われる“ス” の連呼……
二人の話を聞きながら、あたしは目の前のバス停を見つめていた。