SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
あまりのおぞましさに身の毛がよだつ。
ドカドカと嫌な動悸が止まらず、一ノ瀬は浅い呼吸を繰り返した。
「どういう事だ! Blue dollの奴ら! 人身売買って……人体実験してたっていうのか! 子供をっ! こいつも! 人体実験されて……クソッ!」
“ガン!” と一ノ瀬がイスを蹴飛ばす。
「 それに、なんなんだあれは!」
最後にチラリと映りこんだ、黒い羽と鬼のような手……
一ノ瀬は頭を抱える。
「 一ノ瀬さん 」
一樹が倒れたイスを起こして言う。
「今は、偽造された記憶を消していかないと全ての真実は見えません。……ただ、この子をすべて見るには覚悟が必要のようです 」
一樹は悲しげに少女を見つめる。
一ノ瀬はフラフラと窓の方へ近づくと、ある人物に電話をかけた。
「……黒木、すぐに来てくれ。……助けたい、やつがいる 」
もう夜も深い……
窓には力なく夜空を見上げる男の顔が映っていた。