SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


あまりのおぞましさに身の毛がよだつ。

ドカドカと嫌な動悸が止まらず、一ノ瀬は浅い呼吸を繰り返した。


「どういう事だ! Blue dollの奴ら! 人身売買って……人体実験してたっていうのか! 子供をっ! こいつも! 人体実験されて……クソッ!」


“ガン!” と一ノ瀬がイスを蹴飛ばす。


「 それに、なんなんだあれは!」


最後にチラリと映りこんだ、黒い羽と鬼のような手……

一ノ瀬は頭を抱える。



「 一ノ瀬さん 」


一樹が倒れたイスを起こして言う。


「今は、偽造された記憶を消していかないと全ての真実は見えません。……ただ、この子をすべて見るには覚悟が必要のようです 」


一樹は悲しげに少女を見つめる。

一ノ瀬はフラフラと窓の方へ近づくと、ある人物に電話をかけた。


「……黒木、すぐに来てくれ。……助けたい、やつがいる 」


もう夜も深い……

窓には力なく夜空を見上げる男の顔が映っていた。
< 23 / 795 >

この作品をシェア

pagetop