SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
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"……ズズ……ズズズ……"


……もう、だから、あたしは……


"……ズ、 ズズ……ズズ……"


……怪力なんかじゃ、ないのに……



「……ハアッ、ハァ、」


……重い……


あたしはバス停を引きずっていた。

モコちゃんはヒモであたしの腰に繋いでる。


"ワンワンワンッ!"


モコちゃんが急にソワソワしだした。

あたしのESPは、バス停からすぐの場所にモコちゃんの家があると示している。


"……ズズ……"


「……もう、少し……」


"……ズリリ……ゴトンッ!"


「……ふう。到着 」


やっとの思いであたしはそこへ辿り着いた。


……はあ、


……もう、本当に疲れた……


滅多にかかない汗をぬぐう。

すると、


「 きみ 」

懐中電灯があたしを照らす。

……?

そこにいたのはオマワリさん。


「 こんな時間に一体何をしとるんだね?」


オマワリさんは不審そうにあたしを見ている。


"察に引っぱられたら厄介だ"


あたしはふと、一ノ瀬の言葉を思い出した。


「 あ~。 ……散歩、してた 」


マニュアルの中から適当な言葉を言ってみる。


「……散歩?」


「……犬の、散歩 」


腰のヒモをオマワリさんに見せた。

すると、


「……きみの犬はバス停かね?」


オマワリさんが何故かプルプル震えてる。


「……?」


あたしは視線を下に落とす。


……あれ。

ヒモの先端がバス停にグルグル巻き付いていた。
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