SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


〈"美空? もう家には帰っているのですか? 連絡がつかないと、黒木さんが心配していますよ?"〉


「……いつき 」


「……はあ。きみと話していてもラチが明かない……お家の人に来てもらうよ! 家の電話番号は? 何番だね?」


「 あ~、まだ帰ってない。 ……お家の人?  電話番号? 」


天井の一点を見つめながら、あたしは服のポケットに手を入れる。


〈"帰ってない? 何かあったのですか?"〉


「 何番だね⁉︎ お家の人の電話番号!」


「……うん。警察に捕まった。しるしで犬探して見つけた。番号わからない。今日電話のやつ忘れた 」


〈"なんですって? "〉


「 きみ! なにか話が噛み合っとらんぞ⁉︎ まさか、変なクスリでもやっとるんじゃあるまいね⁉︎ ……ん? 何を見とるんだ? 」


オマワリさんはしかめっ面であたしの視線の先を見る。


「 オマワリさんお家の人って。黒木、掃除の人にあたしを妹って言ってるけど……」


「 何をブツクサ言っとるんだね⁉︎」


「 あ~。通信してるんだ 」


「……通信? 何だねそれは⁉︎」


〈"美空、どこの警察署です? 場所は?"〉


「 誰と通信しとると言うんだね? まさか、“ 宇宙人 ” なんて言うんじゃないだろうね⁉︎」


「 オマワリさん、ここはどこ? 」


「 ここは地球だ! それで満足かね⁉︎」


「 一樹。オマワリさん、なんか変だ 」


「 あのねえっ! 変なのはきみだよっ!」


〈"……?"〉

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