SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
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「……ハッ!」

意識がハッキリする。

そこは淡い緑色の空間。

広すぎない、10畳ほどの瞑想部屋。


「……はあぁぁ~、」


ため息と共にへたり込む。

擦りむいたように胸がヒリヒリしていた。

鼓動が痛みを押し上げて、涙が頬をすべり落ちる……


「……うぅ、」


満月の夜、あたしを蝕むマイナスの異変。
あたしはお父さんとお母さんが殺された、あの場面を思い出す。

最初の頃は写真のような断片的なものだった。

こんなにも生々しく見るようになったのは、

二年前、あたしが “ 悲しい ” 感情を取り戻してから。


「……あ゛ああぁぁ~っ!!」


満月の夜は激しいほど悲しい感情が噴出する。

しきりに訪れる刺しこむような痛みに、あたしはただ大声をあげ、耐えるしかなかった。


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「……うぅぅ、 」


どのくらい時間が経ったのか……

あたしはまだ、流れる涙を止められない。


……どうして……


いつもなら、こんなにも長引く事はないのに。


"……ピチャ……ピチャン……"


床に落ちる涙の水音だけが妙に部屋に響いている。


……なんだろう、


……この、違和感は……



「 ! 」


敷き詰められた緑色のカーペットを見つめ、ハッとする。

ここで水音なんか響くはずがないのに——、


"オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛~!!"


死霊たちのうめき声。

さっきよりも野太い声があたしを取り巻く。


……っ、

あたしの第六感がざわめく。


——何かが、おかしい ——

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