SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
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あたしは小学2年生。

ここは、Blue doll 地下実験施設。



「…………」


初めてここへ連れて来られた日、あたしは一人、冷たいコンクリートの床に座り込んでいた。

窓のない無機質な部屋。

無数に並んだベッド、器具、電極のモニター、スチール棚にはたくさんの薬剤。

まるでさっきまでいた病室のよう……


「……お父さん、お母さん……」


昼も夜も分からない……

照明だけがやけに明るく室内を照らし続けていた。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


"……ウィーン……"


しばらくしてドアが開かれる。

白衣を着た男と、怯えた目のたくさんの子供たちがぞろぞろと中に入ってきた。

あたしより小さい子、大きい子、年令もばらばらな子供たち……


「「「……わあああ~ん! 」」」


小さい子たちが泣いている。

学校の制服を着たお姉ちゃんがその子たちをなぐさめていた。


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それからしばらくは何もなかった。

子供たちを連れて来た白衣の男も姿を見せない。

たまに女の人がやって来て、食べ物を置いていく。ただ、それだけ……

そのうち、静かだった室内に会話が聞こえるようになった。



「 大丈夫。きっと助けが来てくれるから 」


「 本当? お姉ちゃん?」


「 うん。日本の警察は優秀なんだから! だから希望を捨てちゃだめ! 必ず家に帰れるって信じるの!」


「「「「……うん!! 」」」」


会話の中心は制服を着た、あのお姉ちゃん。

お姉ちゃんの言葉が、下を向いていたみんなの心を元気にしていく。


「………… 」


そんな様子を遠くに見ながら、あたしは一人、首を傾げていた。

だって、あたしはお姉ちゃんの言葉の意味が分からなかったから。

あたしは悪い子だからここにいるのに。

お父さんとお母さんを助けたいから、ここにいるのに。

みんなは、ちがうの?
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