SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


「……大丈夫?」


しばらくして、さっきのお姉ちゃんがあたしに声をかけてきた。

無言のまま、あたしはお姉ちゃんを見上げる。


「 あなたも希望を捨てちゃだめ! そのうちきっと警察が助けに来てくれる。絶対、家に帰れるって信じるの! 」


お姉ちゃんが手をにぎる。

あたしは、やっぱり訳が分からなかった。


「 あたしはいいの 」


お姉ちゃんの手を押し戻す。


「 あたしはここにいる 」


「……え? 」


「 ここで働くの。お父さんとお母さんの為に」


「……なに、言ってるの? 」


お姉ちゃんは浮かない顔……


「 あたしは悪い子だから、社会貢献するの。悪い子だから 」


「 ねえ!」


またお姉ちゃんが手をにぎる。


「 しっかりして! あいつらにマインドコントロールでもされた? 」


「……? 」


「よく聞いて! 悪いのはあなたじゃない! 私たちをここに連れて来た、あいつらなんだよ!」


「……ちがう。だってお父さんとお母さんは……」


「 悪いのはあいつらなの! 」


力強い目があたしを見つめる。


「…………」


あたしは、やっぱり混乱した。

何か引っかかった感じが、頭の中を曇らせた。
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