SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
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「 お姉ちゃんはすごいんだぞ! 剣道だってやってたんだ! ね、そうでしょ? お姉ちゃん!」


「 ん~、ちょっとだけね 」


「 ちょっとでもすごいよ! お姉ちゃんは強いんだ! 悪い奴なんか、みーんなやっつけてくれるんだ!」


「 もう~大げさなんだから。でも、みんなの事は私が守る! だからみんな、希望は絶対捨てちゃダメだからね!」


「「「……うんっ!! 」」」



いつも前向きな言葉で、みんなを励ますお姉ちゃんはみんなのリーダー的存在だった。


お姉ちゃんこそが、みんなの希望、光……


あたしは、みんなと少し温度差を感じながら、


それでもだんだん、お姉ちゃんの言葉が耳に留まるようになっていた。


お姉ちゃんは不思議な人だ……


"悪いのはあいつらなの!"


何度もそう言われると、そうなのかもって思えてくる。


お姉ちゃんの言葉には力がある。強さがある。


あたしの中で少しずつ、


( お姉ちゃんの言う通りかもしれない )


そんな思いが芽生えてきていた。そんな矢先——、


"……ウィーン……"


この、子供たちだけの世界に

突然、大人たちがやって来た……



——ザッ……


白衣を着た大人たち。

その中には、あたしをここに連れて来た、痩せで長身のカイドウと、太った金髪の男、コブもいた。


「 ヒッヒッヒッ、」


カイドウとコブがみんなの前に立ちはだかる。

その緊迫した空気に小さい子たちが泣き出した。



「……あるデータによると、人は集団化することで、同調は同質を生み、仲間意識を芽生えさせ、信用し、助け合うようになるんだそうだ」


カイドウは二本の前歯を見せながら、薄ら笑いを浮かべた。


「 グヒヒッ!」


見定めるように、コブがあたしたちの周りを歩いている。


「 ホント面白かったよ、データ以上にな!」

「……ぐっ! 」


コブが突然、一人の男の子を吊るし上げた。
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