SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「 やめて!」
すかさずお姉ちゃんが男の子を奪い取る。
「 わあああ~ん、お姉ちゃん~! 」
男の子はお姉ちゃんにしがみついて泣き出した。
「 あなたたち、一体何が目的なの! 」
お姉ちゃんはカイドウとコブを睨みつける。
「……目的、ねぇ…… 」
カイドウは含み笑いを浮かべると、冷たい視線で言葉を続けた。
「 目的は、だ。お前らを “人体実験 ” する。ココでな 」
「……何? 何を、言っているの? 」
「 ヒヒ! 喜べ。お前たちはこれから重要な検体となるのだ。選ばれたのだよ、このBlue dollの重大な任務にな 」
「……っ、だからっ! 一体、何の話をしてるの! 人体実験って何! どういう事なのっ!!」
お姉ちゃんが声を荒げる。
ただならぬ様子に、みんなの顔がこわばった。
「 グフッ! そんな驚く事でもないだろお? 昔は当然だったらしいよ? お前らみたいな孤児院の子供とか死刑囚が人体実験されるなんて話」
「……ふ、ふざけないでっ!そんな事が許されるとでも思っているの!」
——ガッ!
コブがお姉ちゃんの髪を乱暴につかむ。
「 あのさあ。ボクたち、誰かに許してもらおうとか、これっぽっちも思ってないわけ!」
「……うっ! 」
髪の毛をつかんだままコブはお姉ちゃんを引きずり、あたしたちから遠ざけた。
「「「……お姉ちゃんっ!! 」」」
追いかけようとしたみんなの前にカイドウが立ちはだかる。
カイドウは人差し指で次々にみんなの額に触れていった。
「「「————!! 」」」
途端に、あたしも、みんなも、体の自由が奪われる。
……なんで……
体がピクリとも動かせない。
声も出せず、まるで操られているかのように目だけがお姉ちゃんの動きを追った。
カイドウがお姉ちゃんに近づく……
「……そうそう。話は戻るが、人生のコペルニクス的転換つったか……。集団の中には、まれにウザい奴がいるんだよなぁ。絶望の中にありながら自分を客観視して、夢だ希望だほざく奴がよお 」
——ガッ!
お姉ちゃんがつかみ上げられる。